2007年10月19日

誇り高い個人タクシー

近場ですが初めて行く場所にタクシーで出向きました。
タクシーなんて久しく乗っていなかったのですが、血糖値も下がっちゃってることだし(適当に考えた)ちょっと面倒で乗ってしまいました。
乗って行き先を告げると運転手さんが考え込むので、地図を差し出すといや判るから、と断られました。
「もう全部記憶してるから」
と、個人タクシーの試験がどれだけ地図を覚えなければならないかについて語り始めました。
彼はものすごく誇りを持っている運転手さんだったのです。
銀行を勤めあげ、やめてから自分はプライドを持ってこの仕事に就いたのである。
地図を覚えるなどという簡単なことができないはずはないのであるとかそんな話です。
そしてナビを指さしこれも純正を買えと頼まれたが純正高いし自分はそんなものに頼ったことがない。
義理があるので付けただけであると打ち明けてくれました。
私は相槌を打ちながらも近場だからすぐ着いちゃうと思うけどこんなに力強く語っているのにどうやって腰を折ればよいのかと考えていました。
後を振り向いて(いや信号待ちで)こちらを真っ直ぐ見据えながら自分がどんな人間であるか、この仕事をどう思っているかを語られたときは降りたくなってきました。
だってタクシーに乗ってそんな真剣な問いかけをされるとは。
しかも目的地すぐそこ。
どうしようと思いつつ運転手さんを持ち上げる発言をしていましたら、彼は私を遮って
「もう着きますよ」
と言ってくれました。
流石だ運転手さん。
彼はこの仕事を軽く見ている人は自分を運ちゃんと呼ぶのだと言っていました。
だから客は選ばせてもらうとも。
散々いやな思いをしてきっと自分を励ましているのでしょう。
実際技術も高い上に誇り高く真面目に生きている方だと思います。
ただそんないい話をするのは遠乗りの客の時がよろしいかと。
だって絶対近場の客は困るから。

4 件のコメント:

  1. うは~!先生の困惑振りが窺えるお話でございました。私も割と相手に気を使ってしまうタイプなので(不必要に愛想が良くなってしまう時が…)臨場感バッチリに手に汗で読ませて頂きました(^-^;私も先生と同じ行動を取ってしまうような…(^^;ゞ
    世の中には色々な人がおりますねぇ。そういう個性的な人との出会いは、戸惑いつつも帰宅した後、話しのネタになるなあ!とウズウズしてしまったりします。呑気です。

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  2. きくぞーさん

    きくぞーさんもですか。
    我々やっぱりちょっと感性近いかもしれないですね(笑)
    私は気をつけないと不自然になってしまいます。
    相手も自分も気にしなければそれで済むのに余計なこと考えてみたりして。
    ほんと結構みなさん面白いから気をつけていればもっといろいろエピソードはあるんでしょうね。
    きくぞーさんは呑気でフィニッシュ出来るなら無問題ですよ。
    私は何か面白いことあったのに何だっけという衝撃のラストを迎えることが。

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  3. 個人タクシーって、なるのが結構大変みたいです。最初に法人タクシーで修行して(稼ぎの天引き4割以上!)、その後、個人タクシーの組合(組合によって頭に乗っけているぼんぼりが違う)にテラ銭払って商売するのですが、その時にどうも踏み絵があるらしく(何年勤めて無事故無違反、みたいな)一回でも事故歴がある人はなかなか個人になれないらしいです。
    なんで私がこうしたことを書くかというと、やはり誇り高いタクシーの運転手氏が語り出して、聴きもしないことを教えてくれたからです。(どーでも良かったので、余興に相づちを打っていたら、延々と語ってくれました)いやはや。中距離だったから私も暇だったのでいーんですけど、運転手氏が語りたくなる気持ちも分かるんですが、どーやって話の腰を折ろうかと思ったのは先生と同じでございました。

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  4. Sioさん

    ああ、なるほどですねえ。
    この手の業界話は面白いと思うんですが、知りたいときに聞くわけではないということと、語る人物がフィルターかけているというのが問題ですね。
    そのフィルターの多くは自慢か愚痴ですしね。
    聞くか聞かないか事実上選択できないタクシーの中でやられると辛い物が…
    でも結局みんなそれなりにタクシーでは似たような体験をしている、乗る以上は覚悟せよってことかもしれませんね。
    まあおそらくはイヤな客に頻繁に絡まれているであろう運転手の苦労を思えばそのくらい我慢してあげようかとも思います。

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